タルコフスキーという映画監督が好きです。
手放しでお勧めしたいのですが、
アマプラにもないし、どうしたらいいのやら。
ロシアの映像作家で、1986年に没しています。
アンドレイ・タルコフスキー(Wikipedia)
SF映画の巨匠、「映像の詩人」とも呼ばれ、
ロシアの黒澤明とも言われています。
よく語られるシンボルとしての水の表現、
火、そして光。廃墟。詩的な台詞。
監督の感性が鋭すぎて眠くなりそうですが、
あまりの美しさに圧倒されます。
カラーとモノクロの表現も巧みです。
タルコフスキーを知ったきっかけはネットで見かけた、
「ストーカー」という映画のレビューでした。
ストーカーとは、付け回す方のストーカーではなく、
「密猟者」という意味。
そのレビューでは、心理学を切り口にしていて、
自分で思っている自分と、受け入れがたいもう一人の自分、
ユングが名付けた「シャドウ」についての解説が主でした。
舞台はどことも知れないある小国、
ある日突然、とある区域に異変が起こります。
隕石の衝突か、宇宙人の来訪か、それはわかりません。
なんだかわからないのですがとにかく何かがあって、
封鎖された区域がありました。
軍隊を派遣しても、誰一人帰ってきませんでした。
いつしかその場所はゾーンと呼ばれ、
ゾーンの奥には部屋があり、
その部屋は、入った人の「本当の願い」を叶える、
と噂されるようになります。
という背景がテロップで入り、
物語はそこからはじまります。
原作はストルガツキー兄弟の「路傍のピクニック」。
レビューを見て面白そうだと思ったのですが、
どこで視聴できるのかわからず、
かろうじてニコニコ動画に、
切れ切れに上がっているのを見つけました。
しかし、翻訳などが中途半端で、
それでは満足できませんでした。
諦めかけていたある時、
正月に母方の叔父が我が家に来たので、
なんとなくその話を叔父にしたら、
叔父がなんと、タルコフスキーのファンでした。
いままで一度も聞いたことがなかったので、
驚きました。
叔父はタルコフスキーの作品のDVDを、
「ストーカー」以外にもダビングしてくれて、
奇跡的に、他の作品も見ることができました。
「僕の村は戦場だった」「惑星ソラリス」、
「鏡」、「ノスタルジア」、「サクリファイス」etc…
とりあえず「ストーカー」を観ました。
ニコニコでは画質が荒くてわからなかったのですが、
映像の美しさにまず驚きました。
内容は冗長とも受け取れるし、
意図して退屈になるよう撮られているシーンもあり、
わかりにくい部分もありましたが、
レビューを読んでいたので理解できました。
映像美に一気にハマっていったのですが、
作品について調べたりしているうちに、
さらに驚いたことがありました。
原作のストルガツキー兄弟の兄は、
日本文学者で、上田秋成『雨月物語』の、
ロシア語訳者だったのです。
『雨月物語』は私の大好物の古典です。
タルコフスキーは映画を作るとき、
必ず映画の『七人の侍』と、
『雨月物語』を観ていたとも、
Wikiに書かれています。
ここで繋がるとは。あなおそろしや。
『雨月物語』を知ったきっかけは、
貴志祐介の小説「十三番目の人格」の中に、
イソラというめちゃくちゃこわい人格が出てきて、
元になった「吉備津の釜」とはなんぞや、
と気になって仕方がなく、
Amazonで注文したのが始まりでした。
読んでみると、どこかで読んだような話が多いような?
『雨月物語』の影響を受けた作品は、
とても多いのではと感じました。
上田秋成はロシア芸術にまで影響を与えていたのか。
ストルガツキー兄弟とタルコフスキーを繋げたのは、
『雨月物語』だったのかもしれない。
「路傍のピクニック」は読んだことがないので、
いつか読むリストに入れてます。
タルコフスキーの映画は、
とにかく映像美が突出しているのですが、
台詞も詩的で美しく哲学的です。
「ノスタルジア」から、
お気に入りの台詞を引用します。
美しい景色など見飽きてる。うんざりだ
ノスタルジア
大切なのは幸福になることではないよ
ノスタルジア
そうなの? と耳を傾けずにいられません。
他の作品も、これほど芸術性の高い映画は、
見たことがない……、と思える作品群です。
SF映画によくあるエイリアン、最先端のAIロボット、
などのエンターテイメント性はありませんが、
タルコフスキーをもっと広めたい。
映画というと、プロットが面白く、
勢いがあって、その中で世界が完結している、
そんなイメージでしたが、これは違います。
非常に感性の鋭い映画監督です。