読了しました……。
放心状態。
読み終わらないうちに、
Amazon primeにあったので映画を見てしまい、
どうなるかはわかっていたのですが。
就活の中で、痛い自分、等身大の自分と向き合ったり、
目を背けたり、自分以外をあざけったり、
とにかくあがいてもがく現代の若者の話……かなー。
それだけでは説明がつかないお話なのですが。
主要な人物の中で、ひとりだけ、
「就活なんてしない。何の意味があるの?
誰のためにするの?何になれるの?」
という感じで場を乱す隆良という人物がいて、
最初はずいぶんと偏屈に見えるのですが、
次第に「あ、この人純粋だ」と思えてくる。
誰もあえて言わないでいることを、
口にして、実践して、体現している。
内定がとれた人物の一人、光太郎は、
「俺って、ただ就活が得意なだけだったんだって」
朝井 リョウ. 何者(新潮文庫) (p.235). 新潮社. Kindle 版.
「就活は終わったけど、俺、何にもなれた気がしねえ」
朝井 リョウ. 何者(新潮文庫) (p.237). 新潮社. Kindle 版.
と、なんだか力ない言葉を発します……。
ラストは理香のセリフが突き刺さります。
「私だって、ツイッターで自分の努力を実況中継していないと、
立っていられない」
ぐ、と、両足に力を込める。
「もう、立っていられないんだよね」
朝井 リョウ. 何者(新潮文庫) (p.257). 新潮社. Kindle 版.
私の中には隆良に近いやつがいて、
「就活は本番じゃない」と思っていたし、
「プレゼン得意な人はいいよね」とか、
「実際に使える人材じゃないと意味ないのに、
就活ってなんでこんな、自分を大きく見せたり、
躍起にならなきゃいけないんだろう」、
どこかで「就活の達人になってもなあ」とか、
考えていました。
みんな真剣だったから、口には出さなかったけど。
就職してしまったら、
就活ごとき通過できなくてどうする、
みたいな世界が広がっていて、
当たり前にように働いて……。
ある日目上の人に、
「毎日働いて寝るだけですね……」
なんてこぼしたら、
「働くってそういうことやで」
って返ってきて「なんか違う」と思ったり。
「就活誤ったな」とその時は思いました。
入ってみないと本当にわからない。
私事なのでこのくらいで……。
就活というライフイベントに直面して、
荒波に揉まれる人の姿を刻銘に描き出した作品。
描写が繊細なのも惹きこまれます。
最後の拓人は、本当にかっこわるくて、
情けなくて、でもすがすがしいほど等身大で、
「生身の自分なんてこんなもんだよね」、
と背中を押されたような気がしました。
映画の印象がちょっと被っています。
痛い、つらい、と思いながら、
最後まで読んでよかったです。
今週もどうかご無事で。